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Jurassic World ジュラシック・ワールド

アメリカ映画 (2015)

タイ・シンプキンス(Ty Simpkins)が準主役を演じた超大作映画。公開当時、世界興行収入歴代3位(16.70億ドル)を記録している(現在では、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に次いで4位)。因みに、その2年前に出演した『アイアンマン3』も現時点で歴代10位だ。主役を演じたことはないが、大作映画の名脇子役と言える。本作でも、無邪気な喜びと、極限の恐怖を表現し、それでいてとても可愛いので、映画の中にぴったりと納まっている。他の、もっと個性的な子役ではこうはいかないであろう。なお、恐竜のテーマパークと子供は切り離せないので、特撮技術に革命をもたらした初代の『ジュラシック・パーク』(1993)と2作目の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997)にはジョゼフ・マゼロが、3作目の『ジュラシック・パークⅢ』(2001)にはトレヴァー・モーガンが出演している。

映画の舞台は、1作目と同じヌブラル島(2・3作目はソルナ島)。前3作と違い、テーマパークとして既に開業して久しく、離島であるにもかかわらず一日2万人以上の入場者を誇る人気パークだ。ただ、集客能力を維持するため、それまでのような毀損したDNAの修復だけではなく、種を超えた遺伝子操作により、人工的に強大な恐竜を作り出してしまったことが落とし穴になり、大惨事が発生するというストーリーになっている。たまたま、その時に居合わせたのは、タイ演じるグレイと、その兄ザックの兄弟。たまたま叔母クレアがパークの運営責任者だったこともあり、離婚寸前の両親が最後の兄弟旅行にと送り出したのであろう。2人がちょうどジャイロスフィアという “2人用のサファリ見物カー” に乗って恐竜の放し飼いエリアに入った時に、非公開で飼育中の強大な恐竜インドミナスが逃げ出す。そして、避難指示に従わなかった2人のジャイロスフィアに襲いかかる。2人は奇跡的に逃げ出して、自力でビジターセンターまで戻るが、そこにインドミナスによって破壊された鳥類園から逃げ出した大量の翼竜が襲来し、一難去ってまた一難となる。最後には、インドミナス、ラプトル、ティラノサウルスの三つ巴の闘いもある。

タイ・シンプキンスの出演場面は40分近くになり、エンドクレジットを除く本編の33%に達する。恐らく、これまでの出演作の中で一番多いのではないだろうか。公開年は2015だが、CGに時間がかかっていると思われるので、撮影時は11-12才であろう。カールした長い金髪と青い目の可愛い少年らしさが、一番よく堪能できる出演作である。ただ、映画を観にきたほとんどすべての客は恐竜が目的なのであって、子役は単なる映画のスリルを増すための道具立てでしかないのだが… 以下のあらすじは、33%の部分に焦点を当てて紹介する。


あらすじ

朝、グレイの部屋から映画は始まる。恐竜おたくで、これから始まる大冒険に興奮収まらないグレイ。しかし、母に「飛行機が出るまで2時間ないのよ」と言われると、「デイン空港まで36分。渋滞しても60分」と冷静に答える〔デイン空港はシカゴの北のウィスコンシン州にある地方空港〕。一方の兄ザックは、恐竜のテーマパークなど子供だましだと思い、恋人との1週間の別れの方が重要問題だ。空港で兄にいろいろ注意した後、母は2人に、「忘れないで。何かが追ってきたら、走るのよ」と冗談を言う。ニンマリするグレイ(1枚目の写真)。兄の方は、「分かった。面白いよ。じゃあね」とどうでもいい感じ。2人を見送った後に、父が「家族一緒の最後の朝食だったかな」と言う。これは、両親が離婚寸前だから出た言葉だったが、他の意味にも取れるので〔事故で何かある〕、母は「どうして そんなこと言わないといけないの?」と責める。飛行機は、順調にコスタリカに到着。そして、2人はすぐに双胴船へ。船上で、グレイが恐竜のことを話題にしても、兄は “女の子探し” にしか関心がない。かくして満員の客を乗せて、船はヌブラル島に近づいて行く(2枚目の写真)。
  
  

船を降りた2人をがっかりさせたのは、クレア叔母さんが出迎えに来ず、「ザックとグレイ」と書いたプレートを掲げた助手に迎えられたこと。船着場からビジターセンターに向かうモノレールの中、先頭車両に乗り込んだ2人。興味の有無が2人の表情にはっきりと現れている。興奮して目をきょろきょろさせるグレイ(1枚目の写真)。「先頭車両にお乗りの皆様。メイン・ゲートを是非ご覧下さい。20年前の当初のパークをイメージして造られたものです」のアナウンスがあると、さっそくモノレールの一番前に飛び出して行って、有名なゲートを見ようとする。ジュラシック・パークのゲートにオマージュを捧げたデザインだ(2枚目の写真)。
  
  

終着駅に到着したグレイは全速で建物内に飛び込む。同行の助手から「ゆっくりできないの?」と訊かれ、兄は「ムリだ」。グレイは、もうとっくにエスカレーターに乗って、「早く!」と手招いている(1枚目の写真)。3人は、そのままホテルの部屋へ。叔母さんがパーク全体の運営責任者という高いポジションにいるので、VIP待遇だと伝えられる〔手首にはめる青いリストバンドで、どんなアトラクションにも並ばずに参加できる〕。グレイがベランダに出ると、眼下に湖が見え、その向こうには来場者のひしめき合うビジターセンターのメインストリートが俯瞰できる。わくわくするような眺めだ。
  
  

約束の時間が近づき、ビジターセンターの最奥部にあるサムソン・イノベーション・センターに入る兄弟。ここは、恐竜に関する基本的な情報を展示しているだけでなく、ハモンド・クリエイション・ラボと呼ばれる公開実験室や、新種の恐竜を開発している非公開の実験室などがある中枢施設だ。入った途端、最高に嬉しそうな顔をするグレイ(1枚目の写真)。映画をいろいろ観てきたが、これほど嬉しそうな顔は見たことがない。すごく大きな口だ。好奇心一杯で飛び回るグレイ。ただ、兄からは「おい、うろちょろするな。ベビーシッター代までもらってない」と言われてしまう。その時、「グレイ、あなたなの?」という声が聞こえる「。「クレア叔母さん!」と言って、抱きつくグレイ。一方、仕事一本槍のクレアは、抱きつかれたことなどなくて戸惑う。兄に対して「この前会ったのって、3年か4年前だったかしら?」とあやふやに訊き、「7年」と言われる。ということは、グレイとは幼児時代に会っただけだ。グレイが抱きついたのは、再会の喜びではなく、人懐っこさと、ここに来させてくれた感謝の意味を込めてであろう。叔母さんから、「ザラがちゃんと世話してくれるわ」と訊き、「一緒に来ないの?」と不審げなグレイ(2枚目の写真)。
  
  

助手に、お子様向きのジェントル・ジャイアンツふれあい動物園に連れて来られた2人。小さな子供たちが小さな恐竜と遊ぶ場所だが、兄にとっては退屈の一語に尽きる。それでも興味のあるグレイは、付き添いの大人達が邪魔でぴょんぴょん飛びながら、「持ち上げてよ。見えない」と兄に頼むが、「パパじゃない。お前も5歳じゃない」と断られる。兄は、鑑賞できる年頃の女性もいないので、助手が携帯に気を取られている隙に「出るぞ」「行け、走るんだ!」とグレイをそそのかして逃げ出す。2人は、そのままメインストリートを駆け抜け(1枚目の写真)、グレイが兄の意志など無視してティラノサウルス・レックス・キングダムへと走り込む。仕方なく付いて行く兄。人気の高い恐竜ティラノサウルスの生態を観察できる場所だ。その割に、窓が小さく、グレイは背が低いので、後ろからでは、必死でジャンプしてもまともに見えない(2枚目の写真)。その間に、ザックは母に電話し、叔母さんが一緒じゃないとバラしてしまう
  
  

2人が次に向かったのは、モササウルスのエサやりショー。こちらは、大規模な観客席が用意されていて、水上高く吊るされた大型のホホジロザメに向かって水中から巨大なモササウルスが大口を開けて飛びかかるもので、よくあるイルカショーの恐竜版。だが、迫力はものすごい(1枚目の写真)。これにはさすがの兄も度肝を抜かれる。グレイの開けた口の大きなこと(2枚目の写真)。水しぶきでずぶ濡れになり、グレイと一緒にはしゃぐ。ここまでのグレイの表情は、ほとんど常に、笑っているか驚いているかだ。これほど喜びっ放しの表情は映画ではなかなか観られないが、タイの笑顔は実に自然で、本当に楽しんでいる様子が、見ていて微笑ましい。なお、ショーが終わると座席が沈み込んで、水中にいるモササウルスを観客席から直接眺められる大掛かりな仕掛けになっている。そこでモササウルスがエサを食べるのを見ながら、グレイが「歯が88本あるんだよ」と兄に教える。グレイが細かいところまで恐竜に詳しいことを示す、重要なシーンだ。
  
  

しかし、この時、島の北にあるインドミナス・レックスのパドック〔隔離飼育施設〕では、重大な事故が起きていた。この恐竜は、よりエキサイティングなアトラクションの目玉として、遺伝子操作で人工的に作り出されたハイブリッド恐竜で、遺伝子学者という表向きの顔と、インジェン社の秘密の軍事組織のメンバーという二重の顔を持つウー博士によって設計されたもので、混合された他生物の遺伝子が何か誰も把握していない。クレア叔母と、ラプトル飼育係りのオーウェン〔この2人が主役〕がパドックを訪れると、インドミナスの姿が見えず〔ジャングル状になっているので隠れていれば見えなくてもいいのだが〕、熱感知センサーも、パドック内に熱を発生するような生物がいないことを示している。さらに、パドックを囲む高い壁の内面には恐竜の爪の跡が付いている。このことは、インドミナスが壁をよじ登って逃げ出しことを示唆している。総責任者のクレアは慌ててコントロール・ルームに車を飛ばし、車内からインドミナスの皮膚に埋め込んだGPSセンサーで、今どこにいるか調べるようとする。この手順は根本的に間違っていた。まず、パドック内でGPSの位置を確かめてから、必要に応じてコントロール・ルームに向かうべきだったのだ。というのも、恐竜は実は逃げていなくて、壁に爪跡を残し、組み込まれたアマガエルの遺伝子で体温を低下させ、人間に “逃げた” と勘違いさせるだけの知能を有していたのだ。クレアが飛び出して言った後に、パドック内を調べるために中に入った3人は、突然現れた恐竜に恐慌を来たし、足の遅い係員がうっかり外へ逃げようとゲートを開けたことから、後を追ってそこから逃げ出したオーウェンに続き、ゲートを破壊してインドミナスも逃げ出してしまった(1枚目の写真)。一方、グレイ達は、そんな事態とは知らず、モノレールに乗って、パーク最大の呼び物であるジャイロスフィアのアトラクションに向かっていた。車内で、グレイは初めて悲しい表情を見せる。そして、突然 兄に「もし、ママとパパが離婚したら、どっちかがママに、もう一人がパパに?」と訊く。最初は「離婚なんかするかよ。お前は世間知らずだからな。いつもああなんだ」と言うが、「別々の弁護士にメールしてる」「グーグルしたら、離婚弁護士だった」と打ち明ける。それでも、あと2年で大学生の兄は、さほど気にせず、「友達の両親は みんな離婚してる」と冷たい。しかし、泣き出した弟を見て、最初は、「何もかも2回できるんだ、誕生日も2回、感謝祭も2回…」と変な慰め方をし、「2回したくなんかない」と言われると、今度は「いいか? 大人になれってことだ」と突き放す。これは小学生には酷な言葉だ。涙目で窓を見るグレイ。彼の目がこれ程深いブルー・グリーンだったかと驚かされる
  
  

次が、いよいよジャイロスフィアのシーン(1枚目の写真)。全体を高強度の透明材料で覆った球体で、360度の展望が楽しめ、何があっても常に座席が水平に保たれるという素晴らしい乗り物だ。2015年はおろか、あと4半世紀しても実現しないであろう。その現実性はさておき、兄弟がこの乗り物で恐竜達の間をゆっくりと進んでいくシーン(2枚目の写真)は、初代の『ジュラシック・パーク』で草原を恐竜達がゆっくりと歩いていくシーンと同じくらいインパクトがある。こんな乗り物があれば、心から乗ってみたいと思わせるところが凄い。2人が満喫している時、車内の案内パネルに緊急のアナウンスが入る。「技術的問題が発生したため、すべてのアトラクションは中止します。乗り物から速やかに降り、ビジターセンターに戻って下さい」。「なあ、あと数分 続けよう」と言う兄に対し、グレイは「打ち切ったのに」と不安そうだ。しかし、兄は、「特別なリストバンドがあるだろ。俺達VIPなんだ。行こう、楽しまないと」と続行してしまう。しばらくして、子供達のことが急に心配になったクレア叔母さんから、携帯がかかってくるが、球体の中なので、雑音が強くて何も聞こえない(3枚目の写真)。しかし、叔母には、兄が、「ハムスターボールの中にいるから」と言ったのが聞き取れた。そこで、自ら、オーウェンと一緒に助けに行くことにする。何といっても姉の子供達だから、責任重大なのだ。兄が、どんどん密林の中に入って行くので、グレイは気が気でない。「ダメだよ、こんなの良くないよ」。「最高だろ」。「ううん、逮捕されちゃうよ。丸刈りにされて、トイレでビール作りだ」。
  
  
  

その時、目の前に4頭のアンキロサウルスが現われた。全身を堅い皮で覆われた鎧竜だ。兄:「凄いだろ。4頭のダイナサウルスとこんな近くでご対面だ」〔ダイナサウルスは恐竜映画の題目で恐竜の種でない。兄が如何に恐竜のことを知らないかが分かる〕。「アンキロサウルスだよ。ここにいちゃいいけない。それに5頭だ」。「恐竜博士じゃなかったのか? いいか、1、2、3、4」。そして、グレイが「5」と言って、前方を指差す。確かに、球体の前面に恐竜の顔が見える。それは、ジャイロスフィアの背後に迫ったインドミナスの顔が、映っていたのだ。後ろを振り向いて恐ろしい恐竜の存在に気付く2人(1枚目の写真)。そこから、この映画における二大恐怖シーンの1番目がスタートする。逃げる間もなく、インドミナスに跳ね飛ばされて急回転しながら転がって行くジャイロスフィア。座席は水平に保たれているが、2人とも顔は恐怖でひきつっている(2枚目の写真)。一度は何とか止まったものの、インドミナスと闘うために振り上げたアンキロサウルスの尻尾がジャイロスフィアに当り、跳ね飛ばされ、今度は木に正面からぶつかり、その衝撃で水平性を保つ部分が壊れ、逆立ち状態になり、かつ、移動もできなくなってしまう(3枚目の写真)。そこに、アンキロサウルスの首を噛み砕いたインドミナスが襲いかかる。50口径の拳銃でも壊れない、と安全性を売り物にしていた高強度の透明材料も、インドミナスの巨大な前腕の一撃で爪が貫通する。360度透明ということは、襲ってくる恐竜の巨大な口や歯まで丸見えな訳で、その恐怖たるや凄まじい(4枚目の写真)。球体はインドミナスの巨大な顎にくわえられ、徐々に変形し、何度も叩き付けられて底部が破壊される。『ジュラシック・パーク』でジープがティラノサウルスに襲われるシーンがあるが、その二番煎じではなく、新体験の恐怖を見事に生み出している。2人は、球体が咥え上げられた瞬間、固定ベルトを外し、破壊された底部から、落ちるように逃げ出す(5枚目の写真)。そして、インドミナスに追われ(6枚目の写真)、崖っぷちまで追い詰められ(7枚目の写真)、決死の覚悟で滝壺に飛び込む(8枚目の写真)。CGを多用した恐竜同士の闘いと違い、標的となったのが無力な子供なので、映画の中盤を締める最大の見せ場となっている。
  
  
  
  
  
  
  
  

グレイとザックの兄弟は、滝でインドミナスをまくと、ジャングルへと入って行く。地面にころがっていた割れたヘルメットを怖そうに拾い上げるグレイ。近くには、壊れたジープもある。実は、これらの残骸は、インドミナスが逃げ出してから最初に行われた捕獲作戦の惨めな失敗の跡だった。その場所のすぐ先で、兄が、ジュラシック・パーク時代の旧ビジターセンターの入口を見つける。急いで中に逃げ込む2人。いつインドミナスに襲われるか分からないからだ。旧センターの中は廃墟と化している。内部を調べていると、20年前のジープを発見する。車の修理に詳しい兄は、使えそうなバッテリーを別の車から外す。どうせ動かないや、と諦め顔のグレイ(1枚目の写真)。兄に「そこら辺にいると思ってるのか?」と訊かれると恐怖のあまり声も出ない。「いいか、絶対この近くにはいない。いいな。安全なんだ」。以前と違い、兄には、弟を思いやる心が生まれている。そして、バッテリーを渡し、「さあ、これを持って行け。俺より強いだろ」。その信頼の言葉に、かすかな喜びを見せるグレイ。結局、古いバッテリーの再充電に成功。さっそくジープに乗り込む。グレイが、「運転免許試験に落ちたと思ってたけど」と兄に訊くと(2枚目の写真)、「路上試験だけだ」。グレイとザックは、もう気心の知れた仲の良い兄弟のように振舞っている。そして、ビジターセンターに向かって、ジープを急発進させる。
  
  

その間、中枢であるコントロール・ルームでは、パークの所有者でもあり、世界有数の大富豪でもあるCEOが自らヘリコプターを操縦し、機関銃でインドミナスを撃ち殺す決心をする。そして、すぐさま出発するのだが、運の悪いことに、その時インドミナスのいた場所が、ディモルフォドンとプテラノドンの2種類の翼竜のいる鳥類園の巨大なガラス・ドームの近くだった。機関銃の掃射を受け、インドミナスはガラスを突き破って鳥類園の中に逃げ込む。巨大な恐竜に驚いた翼竜が、破られた開口部から逃げ出し、ヘリコプターを襲い、CEOのヘリは墜落・炎上する。しかし、被害はそれだけに留まらず、逃げ出した数十羽の翼竜がなぜかビジターセンターに向かって飛んで行く(1枚目の写真)。ジープで先行してセンターに向かっていた2人だったが、最初にグレイがルームミラーを見て、後方から接近する翼竜に気付き(2枚目の写真)、「走って、早く!」と叫ぶ。その瞬間の大きな縦長の口。驚きと恐怖の入り混じった表情だ。決して、オーバーアクションではない。もし、本当にこんな立場にあったら、こういう顔になるだろう。
  
  

2人がやっとの思いで辿り着いたビジターセンターは、避難指示で集まった2万人の来場者で、すし詰め状態になっていた。そこに襲いかかる翼竜の大群。逃げまどう人々。群集と翼竜のCG合成が実にリアルだ。兄弟の助手だった女性と再会した瞬間、彼女は翼竜に咥えられ、空中を翻弄された挙句、最後は湖に落ち、翼竜ごと巨大なモササウルスに飲み込まれてしまう。それを見て、呆然とするグレイ(1枚目の写真)。パーク側も連発式の麻酔銃で対抗する。兄弟も何度か怖い目に遭うが(2枚目の写真)、最悪のシーンは最後に控えている。2人目がけて真っ直ぐに滑空してきた翼竜が、麻酔銃で気絶させられても そのまま突っ込んできて、2人の直前まで鋭い嘴が迫ってくるシーンは、如何にも3D向きだ。ここでもグレイの表情が冴えている(3枚目の写真)。
  
  
  

2人は、ようやくクレア叔母と再会。今度は。オーウェンという力強そうな男性〔ラプトルの調教師〕が一緒だ。ようやく安心できた2人(1枚目の写真)。その時、クレアの元に一報が入る。CEOが死亡した直後、初代ジュラシック・パークを作り上げたインジェン社の警備主任〔ウー博士と結託し、恐竜の軍事利用を考えている〕にコントロール・ルームを乗っ取られ、ラプトルを使ったインドミナス撃滅作戦が進行しているとの内部情報だ。それを知ったオーウェンは、愚行をやめさせようと、クレアと2人の兄弟を連れてラプター・リサーチ・アリーナに向かう。アリーナで警備主任に会い、顔に一発お見舞いするものの、結局は、多勢に無勢で、ラプトルの先導役になることを了承する。そうすれば、少なくとも、ラプトルが無闇に殺されることから守ってやれると思ったからだ。オーウェンが出撃前のラプトルを落ち着かせているのを見て、グレイが「安全なの?」と訊く。「いいや、危険だ」。今度は兄が、「名前は?」。「あれがチャーリー、あっちがエコー、こっちがデルタ。これはブルー。二番手だ」(2枚目の写真)。「一番は?」とグレイ。「今 見てるだろ」〔つまり、オーウェン自身〕。それを聞いてニッコリするグレイ(3枚目の写真)。
  
  
  

ラプトル作戦の行われている間、クレアと甥っ子2人は、有蓋トラックに乗り込んで待機することに。クレアが運転席、2人は荷物室だ。グレイが、「ここなら、何も来ないよね?」と兄に訊く(1枚目の写真)。すると、兄はグレイがうんと小さい時、守ってやった話をし、「俺がそばにいれば、何も心配はいらない」と言う。「だけど、いつも いてくれるとは限らない」。「俺達は兄弟だろ? 兄弟だから、いつだって お互い助け合うんだ。何があろうと」。「何があろうと?」。「そうだ」。これで不仲だった兄弟の間に強い絆ができあがった。一方、ラプトルを使った作戦がいよいよ開始される。アリーナから解き放たれる4匹のラプトル。夜のジャングルの道を、ラプトル4匹と一緒にバイクで疾走するオーウェン(2枚目の写真)。実に絵になる。トラックのモニターで見た兄が「叔母さんの彼、すげぇかっこいい(Your boyfriend's a bad-ass.)」と感心したのもうなずける。因みに「bad-ass」は、「ultra-cool motherfucker」のこと。この「motherfucker」は蔑称ではなく、「奴」くらいの意味。さて、ラプトルが走るのをやめ、インドミナスが現れると想定外の事態が一行を見舞う。インドミナスとラプトルが対話を始めたのだ。オーウェンは、インドミナスのDNAにラプトルの遺伝子が組み込まれているに違いないと悔しがる。しかし、悔しがる暇があるのなら、なぜ発砲しないのかと観ていて苛立つ。何もせず待っている間に対話が完了、ラプトルがインドミナス側に寝返ってしまったからだ。それからようやく始まる銃撃。しかし、インドミナスを殺すに至らず、逆にラプトルの襲撃を受けてしまう。
  
  

逃げ出したインジェ社の軍事車両の跡を追ってアリーナに戻ったラプトルが、待機していたクレアと兄弟のトラックに襲いかかる。必死で車を飛ばして逃げるクレア。トラックに追いすがる2匹のラプトル。1匹はクレアのハンドルさばきで車と木(?)の間に挟み込んでダメージを与え、残った1匹は(1枚目の写真)、兄弟が力を合わせ、電気ショック銃で撃退に成功する(2枚目の写真)。2人は意気軒昂だ。グレイは、クレア叔母さんに「ママに話すのが 待ちきれない」と言い、叔母は「お願いやめて。そんなこと絶対話しちゃダメ」と止めるのに必死。緊迫したシーンの中で、楽しい一コマだ。
  
  

オーウェンがトラックに追いつき、4人で、イノベーション・センター内の実験室に入る。ここから映画が終わるまで、4人はずっと一緒だ。ウー博士は既にヘリコプターで逃げ、残って指揮していた警備主任は、4人の目の前でラプトルに殺される。悪漢2人が両方とも逃げてしまったら、精神衛生上よくないので、この陰謀を主導してきた警備主任がラプトルに噛み殺されるのは当然の報いだ。その場に居合わせた4人は、命がけで逃げ出すが、メインストリートに出たところで、生き残った3匹のラプトルに囲まれる(1枚目の写真)。緊張する4人だが、幸い、オーウェンが長期間にわたって築いてきた信頼関係が効を奏して、再度味方に付けることができた。そこに現れたインドミナス。ラプトルが離反したことを知ったインドミナスは、1匹〔ブルー〕を建物に叩き付けて気絶させる。すぐに、2匹が襲かかるが、巨大恐竜に僅か2匹の小型恐竜では歯が立たない。その劣勢を見ていたグレイが「24、50、もっと必要だ」と言う。「もっと、何が?」。「歯だよ、もっと歯が必要だ」(2枚目の写真)。この部分の解釈は非常に困難だ〔ネットにいろいろな意見が出ているが、明快な解答はない〕。グレイがこの言葉を発した時は、まだ2匹のラプトルが闘っていた。ラプトルの歯は1匹あたり24本とされている。一方、インドミナスは74本とされている。そして、ティラノサウルスは50-60本とされている。第1の可能性:グレイはすべての恐竜の歯の数を知っていて、ラプトル2匹とティラノサウルスで24×2+50=98>74を示唆した〔モササウルスの歯の数が88だと知っていたくらいなので、他の恐竜の歯の数を知っていても不思議ではない〕。第2の可能性:グレイは闘いの場で24+50=74とインドミナスの歯を数え、あまりに多いので、ラプトルだけでは無理だと示唆した〔助っ人の恐竜は何でも良かった〕。しかし、クレアは、経営に詳しくても恐竜には詳しくないので、グレイの曖昧な言葉だけで、なぜティラノサウルスを闘わせようとしたのかは不明。何れにせよ、クレアは、「分かった。ここで待ってて」と言い、ティラノサウルスの入っている9番パドックに直行する。しかし、その間にインドミナスはラプトルの1匹をバーベキュー・コーナーの火で焼き殺し、残りの1匹も噛み殺してしまう。インドミナスは人間を探し、ゆっくりと3人が隠れている建物に近づいて行く。インドミナスの通り過ぎる姿をじっと見つめるグレイ(3枚目の写真)。ここでもブルー・グリーンの目が印象的だ。しかし、グレイにはこの後、大きな危機が襲う。それは、隅に隠れていた3人に向かって伸ばされたインドミナスの爪がグレイの腰のポーチに引っかかってしまったのだ。そのまま引きずり出されれば確実に食べられてしまう。グレイを離すまいと必死でつかむ2人。涙を流してこらえるグレイ(4枚目の写真)。幸い、何とか爪が外れて事なきを得た。
  
  
  
  

9番パドックのゲートを開けさせ、発煙筒に点火し、ティラノサウルスをインドミナスのところまで逃げながら誘導するクレア(1枚目の写真)。すごく勇気ある行動だ。そして始まる史上最強の恐竜同士の対戦(2枚目の写真)。この映画における二大恐怖シーンの2番目のど迫力シーンだ。フルCGと分かっていても、そのリアルさには圧倒される。最初は背が高く前脚の強いインドミナスが圧倒的に優っていたが、そこに生き残った最後の1匹のラプトル〔ブルー〕が参戦すると、闘いは互角に。メインストリート沿いの建物を破壊しながら、壮絶な死闘が続く。そして、逃げまどう4人(3枚目の写真)。ティラノサウルスとラプトルの連合軍がインドミナスを湖畔に追い詰めた時、突然モササウルスが水中から現われ、巨大な顎でインドミナスの首を噛んだまま湖に引きずり込む(4枚目の写真)。その顛末を唖然として見つめる4人(5枚目の写真)。かくして決戦は終了。1頭と1匹の恐竜は、それぞれ別の方向に去って行った。
  
  
  
  
  

最終シーンは、コスタリカの救護所。大きな建物の中に被災者が溢れている。そこに、2人の子を心配した両親が現れる。感動の再会(写真)。しかし、果たしてこの出来事で離婚は中止されるのだろうか? 何となく。母はグレイ、父はザックと親権を分け合うような気がする。しかし、たとえそうなっても、グレイとザックは以前のような仲の悪い兄弟ではなく、生涯助け合っていくような兄弟に変身している点が救いだ。
  

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